《MUMEI》

今日の葬儀に兄の姿はない。

誰よりも心に傷を受けやすい病のため、叔父の家で療養している。

家を出る前、

兄と2人で母の棺に入れる物を決め、

最後に母宛てに手紙を書いた。


母への思いや感謝の言葉は次々と溢れ出す。


このまま溢れ出して、母に届けばいい。


この世界に、

いったいどれだけの言葉が存在するのだろう?


あなたに贈る言葉は、

この世界に用意された言葉では、足りなすぎる。


いつの時も足りなすぎる。


大切な人に贈る言葉は、

この世界の言葉では頼りない。


オレは器用じゃないから、


言葉を選べない。



だから、
せめてこの純粋な思いよ、


届け。



献花された菊の花が美しかった。


目の前で、線香の煙が真っ直ぐ伸び

天井高く、そっと消えていった。

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