《MUMEI》

皿の上に苦手な牛カルビが山盛られていく。
和やかなムード。

なのに、
なんだろ。
もやもやする……

もや………………



………………。

「おい、二郎顔白いぞ」

乙矢が目の前で手を振る。

「……そ いや、寒い。」


    「「寒い?!」」

皆はこちら側に向き直る。
額に汗を滲ませている皆に対し、俺は一滴も出てなかった。



「風邪薬買ってくる」

少し歩くと薬局があって先生がわざわざ行ってくれた。申し訳ない。

有りったけの服を着て腹に何か納めろと無理矢理口に食べ物を詰められ寝袋に包まっていた。

タイミング悪い体の壊し方だ。

楽しそうな声がだだ漏れている……虚しい。
遠足当日に風邪ひいた感覚に似てるな。

仰向けで寝ているので借りたバンガローの天井に蜘蛛の巣が三つあることさえ知ってしまった。
蜘蛛は平気なのにな……


神戸は七生の隣にいるのかな。

「阿呆らし」

寝よう。寝たら治る。
微熱だし早く治してしまおう。
そしたらこの思考も止まるさ。

七生とギクシャクしないで済むんだ、…………多分。

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