《MUMEI》
広い!
「―――――――」

――は?……まあ、そう…だよな。

扉の向こう側の世界。

それはエレベーターだけというシンプルな空間…ではなく!!。

大きな硝子窓から注ぎ湧くまばゆいばかりの陽射し、上階まで突き抜ける迫力満点の吹き抜け、上質な大理石に囲まれた床や壁……

「――――はあ」

エレベーターの脇には一般住宅ではあり得ない背のうんと高いデッかい観葉植物。
とりあえずエレベーターのスイッチを押すと扉が静かに開いた。

――――えっと…。
一階から五階までの表示のみ。何処に行けば良いのかなんて皆目検討もつかない。

だいたいもうびっくりし過ぎて頭ン中真っ白だ。
少し考えた結果とりあえず二階から攻めようと決めボタンを押した。



「―――――そうくるか…」

扉が開くと一気に一面のリビングが広がった。
土足でオッケイって感じな玄関とお揃いの大理石の床。

何畳あるねんって聞きまくりたい程の空間にテーブルやらソファやらキッチンが見える。
ただ、びっくりしながら一周眺めるもここに聖ちゃんが居ない事は明らかな様子なので、俺はとりあえずエレベーターに戻った。





――こんな場合パターン的に3階は親達の空間だろう。
―――建物は4階建てだから恐らく5階は屋上。………



―――4階に間違いない!!



四階を告げる扉が開くとまるでマンションの様な廊下が現れた。
無駄に長い廊下の先には硝子張りの扉が見える。

ガチャ……

「!!!―――はあ」


突然硝子張りの扉とは逆の方の扉が開いた。


「――――は…………長沢?――――」
ボサボサ頭をカリカリかきながら聖が現れた。

「―――佐伯、お、おはよう…」



「―――うん、おはよ、――――――」



何でお前がここに居るって言いたげな表情で俺を見ている。



つかTシャツにジーンズなんてガッカリなスタイルで俺を出迎えてくれた。



「――今お袋から電話あってさ、―――誰が来んのかと思ったら…、
まあいいや、中入って」




俺は遠慮なく聖ちゃんの部屋に入る。




――中は意外と普通。



いや、スゲー広いけどあのリビングからしたら普通の部屋だった…




と思ったら!




「ワリイ!今起きたとこだからシャワー浴びてもいい?」



「あ、ゴメンもしかして俺のせいで起こしちゃった?どうぞ入ってきて?」


いやもう起きるとこだったからなんて言いながら聖ちゃんは自室のシャワールームに消えた。

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