《MUMEI》

「じゃあ、帰るかな……」

だらだら居られない。

「ん、わかった。」

二郎が手を上げるので上げ交わす。



「…………ギャアアア!」

絶叫している二郎に指された先を見る。
手首から血が出ていた。
気付かなかった、多分フェンスで怪我したんだろう。そんなこと気にしてる場合でなかったし。

「か、かーさーん!
手当てして、手当てぇ、乙矢がー!」

思ったより出血していて二郎は軽度のパニックを起こしている。

「うわ、うわあ赤い、わわわわ。」

「うるせー」

七生に言われる程二郎は騒ぎ立てた。

「そのわりにはしっかり見てるよな」

チューハイ片手に二郎の父親は通りすぎ様に言う。

「治すとことか、別の記憶を残すと安心するんだ。」

俺の傷が二郎の母さんに包帯で隠されるまで凝視していた。

「痛い?」

包帯にで巻かれた傷を突かれた。

「いや、なんか包帯ムズムズする。」

それを聞いて安堵の表情を浮かべた。
可愛い……。

こうして二郎と居れば幸せだったんだ。


今は欲深いけれど。

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