《MUMEI》

「あーあ。男の泣くとこなんて見るもんじゃないな。酔いも醒めちゃったよ」

飲みなおそう、と店長の背中が薄暗い廊下の角を曲がっていった。


どうしてこんなふうになってしまったんだろう。

大切なんだと、ずっと一緒にいたいのだと、好きなんだと、
思っていたのは、俺のほうだったはずなのに

勝手に結論を下して、我慢して、収拾がつかないくらいに膨れ上がって捩れる諸々の感情を固い何かで覆い尽くして、こうやって隠してきたのは全て、アイツを傷つけないためだったのに

“なおひろは俺のことなんて何とも思ってないですよ”

因果関係の行き着く先が、全ての結果があの涙なのだとしたら


俺はどうすればいい?


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