《MUMEI》
思い出の場所
  
「たけし〜どこに行くの?」
「んぁ…」

寮の近くにあるゲームセンターに行く途中、かなたに見つかってしまった。

「もう少しで門閉まっちゃうよ?」

小さな子供のように追いかけてくるかなたをジャケットの内側に抱き寄せると、一緒に寮の門を出た。

「どこって…俺達の思い出の場所」
「ん〜?思い出の?……あっ!!」


それは、俺もかなたも高校に入ったばかりの頃だった。

俺は親父に無理矢理入れられた真面目な奴らばかりいるこの学校に嫌気が差して、通い慣れたゲーセンに行ってはグダグダしていた。

いつものように廊下でタバコに火を付けようとしていると、目立たない場所にあるトイレに腕を捕まれて連れ込まれてる小さな子供を見つけた。

遠くから見ていてもヤバそうな雰囲気だったので何となく後をつけると、やっぱり個室から変な声が聞こえてきた。

怖がってる子供の声と、興奮した大人の声。

(俺のシマで変態野郎がのさばってるのは許せねぇ…)

「ゴルァ!何やってんだ!」

そう言って変態野郎を叩きのめしてやろうとトイレのドアを蹴ると、派手な音を立ててドアが内側に勢い良く開いた。

「きゃぁっ!」

安っぽいドアの金具が飛ぶと、向こうにはドアが開いた衝撃でブッ倒れた変態と、驚いて青い目をまん丸にさせた金髪の子供が立っていた。

「…来いよ」
「あっ…ぅ///」

その子供の手を半ば強引に引っ張ると、変態にケリを入れてからゲーセンの外へその子供を連れ出した。



「ガキが、一人でこんな所来てんじゃねぇよ…」
「うっ…ぅ…う〜ι///」

怖がって震えていた子供は、よく見ると結構可愛いらしい顔立ちをしていた。

白い肌に映えるピンク色の頬に、今は青ざめているけどプニュッとした唇、細い肩に小さい指。

金髪で青い目なのは外国人だからなのだろうか、まるで絵画で見る天使のようだった。

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