《MUMEI》

(コレは…その手の奴だと襲いたくなるかもな…)

「おい、お前よ……困ったな…」

その子供は泣いてばかりいて何も言えない状態だったので、こっちもそんな子供にどうしていいか分からなかった。

「この辺は危ないんだぜ…それに夕方だし小学生は家に帰る時間…」
「…ッ…じゃ…ないもん…」
「あ?何?」

チビは何か言おうとしていたが、泣いていてよく聞こえなかったんでもう一度聞き直した。

「しょーがくせぃじゃ…ない…もん///」
「えっ…じゃぁ中坊か?」

そう言うとチビはブンブンと首を横に振っていた。

「えっ…じゃぁ…」

そう言いかけた瞬間、横っ腹に衝撃が走った。



「ぐぁっ!」
「かなたぁー!!ケガしてねぇだろうな!」
「はるちゃん!」

どうやらわき腹を跳び蹴りされたようで…という事は相手は小さい奴か。

「かなたに手を出すな!」

(さっきの…変態か?)

と、思ったが泣いていたチビの顔が俺を蹴ってきた奴の方を向いた瞬間明るくなったんでどうやら知り合いのようだった。

「何だ…テメェは…」

俺の視線の下にはチビを守るように立ちふさがっている”ハル”と呼ばれている奴。

チビより若干大きいが俺より遙か視線の下にあるそいつの目は、俺を睨みつけてきて睨んでも視線を離さなかった。

「違うのっ、はるちゃんι…あのね」


チビの話を聞くと、チビは一緒に来ていた”はる”とはぐれてウロウロしていた時、突然見つけたUFOキャッチャーの中にあったぬいぐるみが欲しくなって、頑張って取っていたんだけど、途中変な奴に話しかけられ急に腕を引かれてトイレに連れ込まれて…さっきの顛末になったという事だった。

…もっと色々と話はとっ散らかっていたけど、要約するとそういう内容だった。

そしてチビ改め”かなた”と、跳び蹴りを入れてきた”はるか”と言う奴は双子の兄弟、微妙に似ていないのは二卵生だから、とか。

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