《MUMEI》
近付き
「千尋ー、おはよー」
大きな声が聞こえて窓の外を見る。大和だ。そこへ聡が
「うるせーぞ大和。俺呼びに来たんじゃないのか」
「何でわざわざおまえ迎えに来なきゃいけないんだよ。」
「千尋、うるさいから行こう」
聡に促され外へ出る。千尋はどうしていいかわからず聡の陰に隠れるように歩くが、大和はさらにその横に並ぶように歩いた。戸惑う千尋に大和は笑顔を見せる。その笑顔に千尋は胸が高鳴った。
「千尋、帰り一緒に帰ろーぜ」
「そうしろ、千尋。俺美紀ちゃんと約束あるから」
「え?いつの間に?」
心底びっくりだ。
「終わったら迎え行くわ」
「う…うん」

その日放課後、言葉通り大和は千尋を迎えに教室まで来た。美紀は一足先に聡と帰ってしまった。
「行こうか」
「うん」
千尋は大和から少し離れるように歩いた。しばらくそうしていたが突然大和は振り向き、千尋の手を取った。
「いや?」
顔を真っ赤にしたまま千尋は左右に首を振った。千尋は自分の心臓の鼓動が大和に聞こえるんじゃないか気が気じゃなかった。
「焦ってる訳じゃないよ」
「うん」
「これでもドキドキしてんだぜ」
「え?」
意外だった。確かに少し後ろから見る大和の顔は耳まで赤かった。
「珍しいもん見たみたいな目で見るな」千尋は吹き出した。大和に対して頑なだった気持ちが一気に解けていった。
千尋の初恋の始まりだった。

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