《MUMEI》
別離
いつものように大和は千尋と一緒だった。千尋は大和といることが当たり前になっていた。近すぎて気付いてなかった。二人の間の影に。
授業中大和が倒れたと聞いて、千尋は保健室へ走った。
「ごめんな、心配かけて。もう大丈夫だから。」
そういう大和の顔色は青白く悪い。千尋の胸は不安でいっぱいだった。

一週間大和は学校を休んだ。その間毎日大和の家に千尋は訪れた。ある日いつも通る河原に千尋は大和から呼び出された。
「千尋に選んでほしいんだ。俺もう千尋を守ってやれないかもしれない。それでも一緒にいてくれるか?それとも頼りない男は嫌いか?」
「…意味わかんないよ。何で急にそんなこと言うの?」
「…俺死ぬかもしれないんだって。ガンなんだって。」
大和の語尾が涙声だった。千尋は迷うことなく言った。
「私言ったよ。大和だけって」
そう言った千尋の目から大粒の涙が零れた。
「おまえがそうやって泣いても守ってやれなくなるんだぞ」
千尋は大和を抱きしめた。
「私は大和だけのものだよ」
「千尋」
抱き合って二人は泣いた。遠からず来る別離の日を思い、泣いた。

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