《MUMEI》

◇◆◇

「咲弥、どうした?」

「今の内に、記憶に止どめておきたくて。忘れないように──」

 日が経つにつれ、咲弥は花々を眺めて過ごす事が多くなった。

 日記を認め読み返しては、懐かしげな眼差しをする。

 紫の瞳が時折潤んで見えるのは、気のせいではないだろう。

「───────」

 このまま時が止まっていて欲しい。

 儚い望みだと分かっている。

 だが咲弥は、そう願わずにはいられない。

◇◆◇

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