《MUMEI》

「…磯野――…。キミって奴は………。」


彼の握り拳が、怒りと悲しみにブルブルと震えていた――…。


今にも僕に殴りかかってきそうな雰囲気だ。



「中島……とりあえず落ち着け…な…?」


険悪な空気を読んだ旧友の一人が、中島をなだめた――…。



中島は、口を真一文字に結んで、僕を睨みつけている。


僕は…それ以上、彼と目を合わせることは無かった。


もう二度と――…

…彼を親友と呼べる日が来ないであろう痛みだけが、虚しく僕の胸に突き刺さった――…。



愛する女性の他に、もう一つ…

…僕は大切なものを失ったのだ――…。

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