《MUMEI》

「…あまりに手懸りが少なすぎるわね」



香織センセーは、紅茶を一口飲み、カップを置いた。



「―…ゆっくり、解決法を探すしかないみたいね」



その提案に、おれは焦った。



「でも!!」


「…でも、なに??」


「―…でも、今週の日曜までには、戻れねーと―…」


蓬田は、日曜に祭り行かなきゃなんねーんだ。



「日曜日、何かあるの??」


「え?…あ、いや、えーと…」



おれが答えあぐねていると、



「―…私、が」



蓬田が呟いた。



「その日は、私が、西城先輩とお祭りに行くの」



香織センセーは、蓬田に顔を向けた。



「西城って…前言ってた??
―…それで、椎名くんもそれに間に合うように、って思ってるわけね?」



…戻るのが早ければ早いほどいいとは、思ってる。


でも別に、蓬田の為とか、そんなんじゃ―…



「…わかったわ。できるだけのことはする。
―…あなた達も、辛いだろうけど―…
協力し合って、乗り越えるのよ?
本当に頼れるのは、お互い入れ替わった相手だけだと思うから」


「はい」

「…うん」



おれたちが頷いたとき、



6限目終了の、チャイムが鳴った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫