《MUMEI》

「寒いねぇ」
「寒いな」

車もほとんど走っていないこの時間帯、誰にも犯されていない雪は本当に綺麗だった。煌々と投げかける月の清浄な光が晴れ渡ったまわりの夜空を紺色に溶かし、地上の雪にしみこむ。張詰めた冷たい空気はまったくの静寂。一幅の絵画のような美しさに息を飲む。

「銀世界だなマジで・・・・」

べしゃ、

「すっげー、雪合戦しほうだい!」

ずるり、俺のジャケットからしたたる氷の粒。
ええと情緒とかホントゼロですね、わかっていたけど。素手で雪を掴んでは楽しげなハタチ過ぎモデルの卵、頬を上気させて積雪の処女地を踏みしめる。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫