《MUMEI》
原因2
「……そもそも、先生がこちらの世界を見られることがおかしいんじゃない?」

「たしかに」

レッカはコクリと頷く。

「先生がこちらの世界をはっきり見ることができるようになったのは、テラに触ったから、ですよね?」

確認するように凜は羽田とその肩に乗ったテラを見る。
羽田は慎重に頷いた。

「それまでは、まさかこんな世界があるなんて思いもしなかったわ」

「あー、わかる。俺も凜に会うまでは同じこと思ったし」

うんうんとレッカは腕を組んで頷いた。
そんなレッカをうるさそうに見やりながら凜は続ける。

「それからはずっとテラと一緒に?」

「……ほとんど一緒に」

羽田の答えに凜はまた考え込む。

「じゃあ、何か? 原因はこいつにあると?」

レッカはテラを指した。
テラは呑気にあくびをしている。

「そうかもしれない、てこと」

考えながら凜は言った。
羽田も同じように考え込む。

 たしかに、こちらの世界を見るようになったのはテラに触ったからだ。
触っている間だけ、見ることができるようになった。
いや、それより前に凜に触れたことで見えるようになったはずだ。
羽田はそれを思い出し、凜に言った。

「ああ、そういえばそうですね。……でも、それは今回のこととは関係ないと思います。テラに触るまでは、先生は独立してこの世界を見ることができなかったわけですから」

「そう……?」

よくわからないが、羽田はとりあえず頷き、そして肩に乗るテラを三人の中心へと置いた。

「こいつ、何なんだろうな?」

改めてテラを見つめながらレッカが言う。
そんなレッカをテラは数回瞬きしながら見上げている。

「自分が拾ったくせに」

「そうだけど。俺はてっきりどこか外国の動物かと」

「こんな動物、いるわけないのに」

凜の呆れたような口調に、レッカはムッと顔を歪めた。

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