《MUMEI》

「此の絵……」

額に飾られている絵画の中で一枚だけ布に包まさったものがあった。

「開けて御覧。」

促されて林太郎は手袋を嵌めてから丁寧に布を取り絵画を見る。

思ったよりも随分と小振りの貴婦人の肖像画だった。

「君には此の肖像画を買い取った倍以上の値で売り付けて貰う。」

実朝は誇らしげに云う。

「……良い絵ですね。」

林太郎は上手い表し方が出来なかった。
何故なら肖像画の貴婦人と林太郎の想い人は瓜二つだったからである。





「作者不明なんだが、惹き付けられる魅力があるだろう。」

惹き付けるのではない、事実、林太郎は絵の中で微笑む彼女に心奪われた。

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