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《MUMEI》 尊さ華奢な千尋が6ヶ月を迎える頃、お腹がだいぶ目立つようになっていた。いくら冬の制服でもごまかしがきかない。千尋は学校を休学した。休学しても、友達の美紀の助けを借りて、勉強は続けた。 「お腹大きくなったね。触ってもいい?」 「いいよ」 美紀はそっと千尋のお腹を撫でた。 「不思議だね。この中に赤ちゃんがいるなんてさ。」 「そうだね」 千尋は笑顔で答えた。大和の忘れ形見。千尋は大事に大事にしてきた。大和と赤ちゃんの成長を喜び、分かち合いたかった。千尋の胸の中はいつも大和で一杯だった。このお腹を見たら、大和は何て言うだろう。既に胎動を感じるお腹に驚くだろうか。 死の直前千尋に新しい命が宿っていることを知った二人。大和は実に嬉しそうだった。暇さえあれば、まだ目立たない千尋のお腹を撫でた。 「名前どうする?男かな。女かな。」 「さあ、どっちだろ。まだ小さすぎてわかんないよ。」 「俺考えたんだ。」「どんなの?」 大和は引き出しから紙を取り出した。 「男なら勇ましい人で勇人。千尋を守らせんの。女の子なら千の夜明けで千明。凹まない子になるように。どうよ。」 「いいね。それにしようよ。」 千尋はその紙を大事にとっていた。 大和のせっかちぶりはまだあった。聡に頼んではベビー服、ベビー用品を買って来させていた。聡も 「気がはえーよ」 と言いつつも、あれこれ買って来ていた。だから千尋の部屋は赤ちゃんの物であふれかえっている。 「幸せだね、パパにこんなに愛されて」 千尋はお腹に語りかけた。 「それじゃ今日はもう帰るね、また明日ね。」 帰り支度をした美紀が言う。 「いつもありがとね。気をつけてね。」 「いいよー、またね。」 一人になった千尋は名前を書いた紙を見た。 「どっちかな…」 引き出しから一冊の日記帳を取り出した。大和の日記だ。全ての頁が千尋のことばかりで、途中からお腹の赤ちゃんへの言葉も加わっている。寂しくなると千尋は日記帳を開いた。 「パパのいない子にしてごめんな。男か女かまだわかんないけど、どうかママを頼んだぞ」 千尋の目に涙が滲む。そこへノックのする音。 「はい」 千尋は日記帳を閉じながら応える。 「美紀ちゃん帰ったのか。」 聡が言う。 「すれ違いだったね。ついさっき帰ったとこだよ。」 「そっか。今日は変わりなかったか?」 「うん、大丈夫」 「もうすぐ飯だってさ。」 「わかった」 聡がドアを閉める。千尋は手にしていた名前を書いた紙に目をやる。寂しさと切なさが胸をしめる。 次へ |
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