《MUMEI》 「…て、ここ、台所だよ!」 「何を今更…」 (う…) 俊彦がそう言うのも無理はなかった。 私は、上半身裸で、ストッキングと下着しか付けていなかった。 「そ、それは、つい…」 俊彦に、流されてしまったからだった。 「蝶子は俺を拒めないもんな」 「キャッ!」 俊彦は私の下着とストッキングをまとめて下げた。 「よく似合ってるから、…伝線しないようにするね」 「…ンッ…ず、るい…」 「何が?」 俊彦は、ゆっくり、私の足を撫でながら、下着とストッキングを下ろしていく。 「…私ばっかり、恥ずかしい思いして、ずるい」 俊彦は、まだ白いスーツを着たままだった。 「だって、しょうがないだろう。 …今日は俺の誕生日なんだから、 でも…」 俊彦は、裸の私を抱き上げた。 「ちゃんと、ベッドでするよ。 …そのかわり」 「?」 首を傾げる私に、俊彦が微笑んだ。 そして… 「お互い、同時に恥ずかしい事、しよう」 と言った。 「お互い?」 歩き始めた俊彦に、しがみつきながら、私は確認した。 俊彦は頷き、私をベッドに優しく降ろした。 前へ |次へ |
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