《MUMEI》

「ちゃんと届いて良かったです」


肌寒さを感じた私は、俊彦の腕の中に戻りながら答えた。


《おじいちゃんも光二も喜んじゃってね。
お返しがしたいって言うのよ》


「そんな…」


喜んでもらえたのは嬉しいが、そこまでしてもらうのは気が引けた。


《それでね、取りに来てくれる?
ホワイトデーに。

…村居さんと二人で》


「え?」


(それって…)


私は、もう一度、祖母に確認した。


「…俊彦と、二人でそちらに行っても、いいって事…でしょうか?」


私の言葉に、俊彦が反応した。


私と同じように、携帯から聞こえる祖母の次の言葉に耳を澄ませた。


《そうなるわね。

…ただし》


私達は祖母の言葉に緊張した。


すると、祖母は『大丈夫よ』と、優しい口調で言った。


《三枝がね、その日は都合が悪いらしいの。
せっかくだし、三枝の家族と今月中にも会ってみない?》


「それは…」


三枝さんの家族は、私にとってはおじといとこにあたるわけだし、会うのは構わないが…


三枝さんの夫はサラリーマンで、土日休みだった。


《それがね、たまたま今月水曜日休みがあるらしいの。だから…》

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