《MUMEI》 予想外の展開二月最後の水曜日。 私と俊彦が、待ち合わせ場所の東京駅の改札口に向かうと、既に祖母が立っていた。 「随分…綺麗な方なのね」 俊彦を見て、祖母はそう言った。 (…あれ?) 俊彦は、笑顔で対応しているが、祖母の反応はいまいちだった。 「…おばあちゃん、どうか、しました?」 「ごめんなさいね。…靴屋さんの店長なのにねぇ…」 はっきりしない祖母の言い方が、逆に気になった。 そして、祖母の口から意外な一言がこぼれた。 『私、ホスト大嫌いなの』 その言葉に…私と俊彦は顔を見合わせた。 「突然、ごめんなさい」 「い、いえ…」 (落ち着いて、俊彦!) 私はハラハラしながら二人を見つめた。 「私、男性は経済力も大切だと思うけれど、あの… ホストという仕事だけは駄目ね! 女性を貢がせるなんて! テレビで観たけど… 村居さんみたいな雰囲気の連中がいたから…つい… ごめんなさい、本当に」 …どうやら祖母の中では、テレビの影響もあり『ホストは最低』という認識があるらしい。 (だ、大丈夫よね?) 俊彦がホストだったのは、昔の話だ。 わざわざ言う必要も無い。 前へ |次へ |
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