《MUMEI》

葬儀開始までの間、

何度も母の前に立ち、

話しかけた。


それでも心落ち着かず、オレは1度会場を後にした。


外には、叔父、叔母達が同じ面持ちで待機している。


オレは母が尊敬し親愛していた叔母達と、在りし日々の思い出話しに興じていた。


母が亡くなる少し前の事、

母と叔母の2人は、
ファンである韓流スターのコンサートに行ったという。

オレもその話しは聞いていた。


母はすごく喜んでいた。

得意気に話していた母の笑顔。


オレが見た最後の笑顔だった。


母は無邪気に笑う。


年甲斐もなく明るく振る舞う。


自分がそうしていないと、


全ての歯車が噛み合わなくなるのを、

知っているかの様に。


オレが見た最後の母は、

生きる強さに溢れていた。


母の面影と、


叔母の笑顔が重なりだす。


気丈に振る舞う姿が、

母にそっくりだった。


今日のこの日も、悲しみは癒えない。


完全なる悲しみからの解放など有り得ない様にも思えた。



オレ達は、ただ、ぼんやりと駐車場を眺めていた。



道路を越えて、


向こう側に広がる景色が羨ましく思えた。

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