《MUMEI》

遺族だけで行われる予定であった会場に、
母の職場の同僚や知人、
友人達が亡き母の為に駆けつけてきてくれた。


あっという間に一般参列者の席が埋まる。


オレは遺族代表の席に着き、
参列者達1人1人に深く頭を下げた。


会場内は悲しみに満ちはじめ、
それぞれの胸の内から溢れ出た、
形にならない感情が渦巻いて見える。


その渦の中心、オレは立っていた。


全てを見届けるよ。


あなたの様な勇気を今1度下さい。


鎮まり帰る会場に、進行のマイクが響く。


空気が一斉に止まる。


微かに菊の花がそよぐ。


叔母が母の棺の前で参列者達への感謝と心情を綴った言葉を述べ、

葬儀はしめやかに開始された。


住職がお経を挙げる中、御焼香がはじまる。


出来るだけの笑顔を作り、目の前の母と遺影の母に手を合わせた。

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