《MUMEI》
双生児
「……お帰りなさい。ほら、入りなさい。林檎あるよ、林檎。」

バァさんは相変わらずだった。

「国雄、緊張?」

光が手を握り直してくれると、幾分気が紛れた。

「大丈夫だから、離さないでな?」

「……俺も居ますが」

幹裕には悪いことをした。実の兄が惚気てるとこなんて見たくなかったろう。

「幹裕も出来れば……」

空いてる片手を上げる。

「……勘弁してくれ。」

心底嫌そうな顔をされた。

「幹裕照れてるんだ。」

光がおちょくる。

「違うし!」

ムキになるとまだ子供らしさが残っていると分かる。

「お前達って兄弟みたい。」

こういう掛け合いは俺には縁がなかったな。



「「そうでもないよ」」

この場合、光はポジティブに、幹裕はネガティブに捉えていた。

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