《MUMEI》

「何が違う! 三枝がお前に貢いでいたのは事実だろうが!」


「そ、それは…」


反論できない俊彦に、保さんは『このクズ!』『女の敵!』と罵り始めた。


三枝さんは、何か言いたげに見えるが、無言のままだった。


私はただ唖然とするばかりだが…


(ま、まずい…)


同じく唖然としていた祖母から…怒りのオーラのようなものを感じた。


(どうしよう…)


弁解したくても、私は何も知らない。


過去、私は俊彦の事情を聞かずに、俊彦を誤解してしまった。


だから


今回は、俊彦から事情をきちんと聞きたかった。


その時。


「…ちょっと来て」


「え? ええと…」


私は、私の手を掴む男の子の名前を


祖母から、聞いたいとこの名前を思い出そうとした。

「亘(わたる)だよ」


そう言って、亘君は、私を店の外に連れ出した。


「…何?」


亘君は、手を離すと、私をジロジロ見つめてきた。


「やっぱり、ホストの彼女だけあって美人だなぁと思って」


「もうホストじゃないわよ!」


怒る私に亘君は『ごめんごめん』と軽い口調で謝った。


そして


「本当に、ごめんなさい」

突然口調を変えた

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