《MUMEI》
隆志視点
「―――――惇」


「―――うん、ゴメン…」



―――惇は俺から話かけないとひたすら黙っていそうな…、

さっき実家に電話したり、裕斗と電話してた時は少しだけテンション上がったけどまた落ちた。





――温泉になんてとても行けるような雰囲気ではなく…、




いや、その前に直ぐにでも惇を自宅まで送らねばならなくなった。




――たった今、惇の兄貴からまた電話があって、ずっと玄関の前で待っているから帰って来いと言われたらしい。





部屋に備え付けられた無人機で会計を済ませた俺は、とりあえず惇を部屋から出る様に促し、車の助手席に乗り込ませるとエンジンをかけた。




「――惇、シートベルトしてて」



そう言いながらナンバープレートを隠していたボードをどかし、車庫のカーテンを引く。




俺が運転席に乗り込むと、惇はちゃんとシートベルトして待っていてくれた。






「ね、隆志…」


「ん?」



「愛してるって言って?」


「――――――」






――不規則に大きな眼が揺らいでいる。


不安で不安で今にも粉々に崩れてしまいそうな…――― …




―――コイツの兄貴って……一体……。

「――惇、…愛してる…」

「うん」




惇は俺の腕に両腕で絡みつきながら頭もくたっと預けてきた。



そこから感じる惇の温もりが愛しくて、




堪らなく切なくて……


「―――愛してる、ずっと………、俺はずっと惇のそばにいるよ」





――腕に伝わる温もり、擦り寄る甘えた仕草。




愛し過ぎて堪らない。





――何があっても俺が惇を守ってやると…俺はかたく





心に誓った。

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