《MUMEI》

(もしかして…)


私は思いきって、質問してみた。


「…あの騒ぎの原因、知ってるの?」


亘君は頷いた。


「元々は、俺と親父が悪いんだ」


首を傾げる私に、亘君は説明を始めた。


「母さん、ものすごい教育ママでさ。『無理だ』って言ってんのに、俺に有名私立中学受験させて…

案の定、落ちた」


(おじいちゃんの影響かな…)


『男は学力』


それが祖父の考え方だった。


「親父は単身赴任が多くて…家庭を顧みなかった。

仕事以外、興味無い人間なんだ。

俺と蝶子…さんが、今日初対面なんて、普通、おかしいだろう?

いくら、死んだからって、蝶子さんの母親は母さんの実の姉なのに。

『一子さんと俺とは面識が無いんだから、その娘とも関わるつもりはない。お前も会う必要はない』って…
今日だって、ばあさんに説得されて、嫌々来たんだぜ」


「そう…なの」


道理で、母の墓参りに保さんと亘君が来ない筈だと私は納得した。


「まぁ、こんな事になるなら、会わない方が良かったかも」


亘君はそう言って苦笑した。


「最初は、久しぶりに友達と飲みに行くって…それだけだったんだ」


亘君は話を戻した。

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