《MUMEI》

「…」


私は何も言えなかった。


そんな私に、亘君は更に厳しい事実をつきつけた。


「母さんもうしろめたかったから、『そうなの』って頷いて、それでやっと俺達三人はもう一度、ちゃんと家族になれた。

だから…ごめんなさい。

母さんは、きっと、本当の事は言わない」


「そんな…」


「あとね…」


(まだ、あるの?)


私は泣きそうになった。


「母さんが…蝶子さんの恋人に貢いだから…

お金…困って…

あの…

母さんの…

実家の、人達に…お金、もらったんだ」


「えぇ?!」


悲鳴を上げた私に、亘君はもう一度『ごめんなさい!』と頭を下げた。


「それって、理由…」


「…『悪いホストに貢がされたから』」


「ま、待ってよ!

そ、そうだ!亘君から、ちゃんと説明して? ね?」


焦った私は亘君の肩を揺さぶった。


「無理だよ。…母さんが、当の本人が認めないんだから」


「じゃ、じゃあ!説得して!息子なんだもの!
お願い!」


私の必死のお願いにも、亘君は首を横に振るばかりだった。


「い、いいじゃん。じいさん達に反対されたって、結婚しちゃえば…」


「よくない!」

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