《MUMEI》 「わかって…もらえるでしょうか?」 私は、そのままの状態で小声で光二おじさんに質問した。 すぐ側で、祖母が『早くしなさい!』と叫んでいた。 店内で、保さんに押さえ付けられているであろう俊彦の姿は、ここからは見えなくて、私はたまらなく不安になった。 「それは、蝶子ちゃん次第だよ? ここで彼氏と逃げたら、母さんはますます怒るだろうけど… どうする?」 「…行きます」 私に選択の余地は無かった。 光二おじさんは、私の肩を抱く腕にグッと力を込めた。 そして、私は、光二おじさんの車の助手席に乗った。 運転席に、光二おじさんが、後部座席に祖母が乗り込んだ。 車は、エンジンがかかった状態だったので、すぐに発進した。 その時、店からものすごい勢いで、俊彦が出てきた。 俊彦の髪やスーツは乱れていて、押さえ付けられたのを必死で振りきったのがわかった。 私は窓を開けようとしたが、ロックされていて、開かなかった。 既に車は駐車場を出ており、俊彦は追いつけなかった。 俊彦の口は 『行くな』 と言っていたような気がした。 前へ |次へ |
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