《MUMEI》

つまり


『興奮させないでほしい』
『大人しく、言う事を聞いてほしい』


という事だ。


「一子の部屋が空いてるから」


祖母が言うと、光二おじさんが『こっちだよ』と手を引いた。


「あ…の…」


「着替えならあるよ」


「いえ、そうじゃなくて…」


私を引っ張りながら階段を上がっていく光二おじさんに、私は戸惑っていた。


「仕事や彼の事が気になるんだよね?」


光二おじさんの言葉に、私は頷いた。


「ちゃんと俺から説明しておくよ。

父さんだって、落ち着いたらちゃんと話を聞くつもりはあるから。

母さんは、どうしても三枝の味方をしたいようだけど…

言っただろう?俺は、『君の味方だよ』って」


そう言って、光二おじさんは、二階にあるふすまの前で止まった。


山田家は、日本家屋で、部屋は全て和室だった。


「ここが、姉さんの部屋だよ」


光二おじさんが、ふすまを開けると、畳の和室は、今も母が生活をしているのではないかと思う位綺麗に片付いていて、掃除もしてあった。


「服も下着も、姉さんの使っていいからね」


「下着は…ちょっと」


「大丈夫。母さんが毎年新品買ってるから」

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