《MUMEI》

「オッケー。切り替えてこう!!」

まぁ今のはしょうがないな。

「よし。1本返しましょう!!」

司令塔の椎名が言う。

(1点取られたくらいで気落ちすんなよ。)

赤高のパス回し。

自分のいるチームのことをこんな風に言うのもなんだが、やはり聖龍のパス回しと比べると随分しょぼく見える。

まぁそれが今のお前たちのスタイルだから。

クロは自分に言い聞かせていた。

ディフェンスに隙がない。

これはボールを持った時にしかわからないが、声を出されることで、気持ちが負ける、隙が見つからない、

『抜ける気がしない。』

そう思うことがある。

自分ではできる気がしない。

そういった気落ちから、積極性が失われ、単調的なパス回しに繋がることがある。

だからこそクロは、

『声を出す。』

『相手よりもシュートを打つ。』

という課題を出した。

ロングシュートでもいい。
シュートチャンスを減らすな。

シュートを打たずして相手ボールになってはたまったもんじゃない。

そんなクロの思いも虚しく、単調的なパス回しをカットされる。

「戻れ!!」

しかし、足が早い。

両サイドと椎名が戻るも、シュートを決められた。

これで2対0だ。

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