《MUMEI》
消えた携帯
(あれ?)


私は、バックの中身を確認して、携帯が無いことに気付いた。


(もしかして…)


私は一階に下りて、祖母に確認した。


祖母は『知らない』と答えた。


一応、電話を借りて携帯にかけてみたのだが…繋がらなかった。


(お店に、落としたのかな?)


私が心配そうな顔をしたので、祖母が三枝さんやお店に連絡してくれたが、結局携帯は見つからなかった。

(困ったな…)


『クローバー』の咲子さんには連絡できたが…


これでは、俊彦に連絡できない。


「そのうち、出てくるわよ。ダメだったら、新しいの買ってあげるわ」


私を励ます祖母の声は、いつもより明るいような気がした。


結局、その日は『祖父の体調がよくないから』という理由で、私は祖父と話す事ができなかった。


実際に、祖父は、私と会ってすぐに寝込んでしまっていた。


夕食を食べながら、私がついため息をついていると、祖母と光二おじさんが私を励ましてくれた。


もっとも…


祖母は、二言目には、『あの男の事は忘れなさい』と言った。


私は、その夜は眠る事ができなかった。

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