《MUMEI》

(華江さんが?)


私もそうだが、光二おじさんも祖母も驚いていた。


「よほど無理をしなければ、専業主婦でもたまになら楽しめる良心的な店でしたよ」


「無理をさせたのよ!あの男が!」


興奮する祖母とは対照的に、華江さんは淡々と話を続けた。


「店長にも、当時の事を知るホストにも話を聞きましたが、俊彦君は三枝さんに無理をしないように注意していたそうですよ」


「それがあの男の手口なのよ!」


「俊彦君はナンバーワンですよ?
そんな小細工しませんよ。
…実際、三枝さんが俊彦君の元を離れても、彼はナンバーワンのままだったんですから」


「三枝が…うちの娘が悪いって言うの?!」


祖母が悲鳴を上げた。


華江さんは首を横に振った。


「そうじゃなくて。『悪いホスト』と決めつけないで、ちゃんと『村居俊彦』を見てほしいんです」


華江さんの訴えに、祖母から意外な答えが返ってきた。


「それは、主人がもうやっているわ」


ーと。


「「え…?」」


「だから、もう帰ってちょうだい!」


そう言って、祖母は父と華江さんを外に追い出した。

カチャリと、玄関に鍵をかける音が聞こえた。

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