《MUMEI》 父と華江さんは、呼び鈴を鳴らし続けた。 「もしもし、警察ですか?」 「や、やめて下さい!」 祖母の声に慌てて私は、光二おじさんを振りきり、階段を駆けおりた。 「「蝶子ちゃん?!」」 「大丈夫! 大丈夫だから、今は、…帰って」 「「でも…」」 二人は玄関の外で迷っている様子だった。 「帰りなさい!」 「そうだ、帰れ!」 私の後ろで祖母と光二おじさんが怒鳴った。 「大丈夫だから、…お願い!」 二人が今にも本当に警察を呼びそうな勢いだったので、私は必死だった。 「ちゃんと、食べてる?」 「うん」 「寝てる?」 「…うん」 私は、嘘が、下手だ。 父はともかく、華江さんには気付かれたかもしれない。 質問していた華江さんが無言になった。 「待ってて!」 「待ってろ!」 二人はそう言って… 山田家を後にした。 前へ |次へ |
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