《MUMEI》

また赤高ボール。

ディフェンス時と違い攻撃時には、声を出すことが少なくなる。

『なんて言えばいいんだろう?』

そんなどうでもいい迷いと恥ずかしさから、声を出す行為を忘れてしまう。

声出しの少なくなる赤高に対し、ディフェンスということもあり一層声を出す聖龍。

ここで積極性が失われる。

攻撃時に弱気になる癖。

今後の課題等とは言っていられる場合ではない。

すぐに改善する必要がある。

しかし、今は試合中。

クロはそれを後回しにしていた。

単調なパス回しが続く。

誰もシュートにいこうとしない。

シュートする意思が見られない相手程守りやすい相手などいない。

(悪循環だな…)

いかにしてシュートを打たせるか?

クロが考えていた時だった。

敵ディフェンスが飛び出す。

パスカットだ!!

またやられた。

独走状態の敵。

スピードに乗った状態からカットされては、追い付くはずもない。

1点を諦めた時だった…

「バシッ!!」

キーパーとの1対1。

村木が、ノーマークからのシュートを止めた。

「でかした!!」

思わず立ち上がるクロ。

「ナイスキー!!」

自然と声が出る。

速攻をキーパーが止める。

それはキーパー最大の見せ場であり、チームの士気向上にも繋がるプレーだ。

ノーマークでのシュートを外す。

シューターにとってこれ以上の屈辱はない。

士気が高まる赤高とは対象的に、

『自分たちは強い。』

そういう自信家の多い聖龍には少し動揺する。

少しずつ…

流れが来ていた。

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