《MUMEI》 見合い写真探偵の調査報告書が届くまで、一週間かかり、その間、私は大人しくしていた。 (帰りたいな…) 静かな山田家でジッとしていると、賑やかな商店街が懐かしかった。 (一昨日の孝太の誕生日イベント、咲子さん、大丈夫だったかな?) 今日はもう、三月五日だった。 それに (俊彦…どうしてるかな?) 探偵の調査報告書には、『毎日職場で女性の足に触れている』とあったから、仕事はしているようだが… (会いたいな…) 私は最近ため息ばかりついていた。 (一度、商店街に戻ろう) そう決意して、階段を下りた私を待っていたのは… 見合い写真の山だった。 「皆、蝶子を気に入ってる男ばかりだ。 学歴も、申し分無い」 「収入も、すごくいいわよ」 「ちょ、ちょっと待って下さい!」 確かに昨日、報告書を読んだ祖父は俊彦を『絶対に許さん』と言った。 しかし…昨日の今日で、この展開は、あまりに早すぎる。 「成人式の写真、送ったでしょ? おじいちゃんに」 祖母の言葉に私は頷いた。 確かに私は、振袖姿の写真を一枚送っていた。 「この人、知り合いに見せて、自慢して回ったのよ」 前へ |次へ |
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