《MUMEI》
戻った携帯
「か、返すタイミングを逃しただけだから、ね?」


「はぁ…」


祖母はそう言って、自室から私の携帯を持ってきた。

「光二、貴様…」


「俺は、蝶子ちゃんの味方だって、最初から言ったよ?

大好きな姉さんの娘をこんなに可愛くしてくれたんだから…

いや、違うか。

可愛く『戻して』くれたんだから、応援してやるよ」

「光二おじさん、…変わった?」


「何? 娘になってもいいって?」


私が首を何度も横に振ると、光二おじさんは苦笑した。


「携帯、まだ使える?」


「あ、大丈夫…」


電源を入れた途端に、携帯が鳴った。


「もしも…」


《蝶子?!》


「俊彦?」


それは、ずっと聞きたかった声だが…


「仕事は?」


《今は集中できないから皆、一日一組な…》

《蝶子ちゃん?》


「…雅彦?」


《うん… あっ!》


《無事か?》


「うん。すみません、誕生日イベント…」


私は孝太に謝った。


《明日!》


「はい?」


和馬の叫び声が響いた。


「もう、いいわね」


「あっ…」


ピッ


祖母が携帯を切った。


すると…今度は家の電話が鳴った。

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