《MUMEI》
意外な訪問客
「も、もしもし?」


祖母は恐る恐る受話器を取った。


「は? えぇ、伊東蝶子は確かにウチの孫ですが…どちら様ですか?」


?


電話相手と祖母は面識が無いようだった。


「え! えぇ、いつも拝見させて頂いております」


前傾気味な祖母の背筋が真っ直ぐになった。


「えぇ、おります。明日? はい、もちろん大丈夫です。

えぇ、家の者も皆揃ってお待ちしておりますわ。

…失礼致します」


祖母は上機嫌で、受話器を置いた。


「誰からだ?」


祖父の質問に、祖母は興奮しながら答えた。


「『ヤマト ユウ』よ! あの、人気絵本作家の!」


「何?! あの、名誉教授の?!」


『ヤマト ユウ』


それは、収入重視の祖母が毎年チェックしている『長者番付』の文化人部門の常連で


学歴重視の祖父が憧れる有名大学の名誉教授で


『シューズクラブ』に勤める井上和馬の父親の


宗方明日馬さんのペンネームだった。


そして、翌日。


『新作のモデルにお孫さんを是非使いたいから』という理由で、明日馬さんは、妻で翻訳家の真理子さんと共に山田家にやってきた。

もちろん、祖父母は大歓迎だった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫