《MUMEI》

優馬さんと女性リポーターの後ろに映ったのが…


あまりに見慣れた景色だったから。


『え〜、私は今、磨劉(まゆ)先生の新作の舞台のモデルになりました商店街に来ております』


磨劉とは、優馬さんのペンネームだった。


『何でも、こちらには、先生の弟さんがいらっしゃるとか?』


『えぇ、まぁ』


リポーターの質問に、優馬さんは照れ笑いを浮かべた。


「そうなんですか?」


「えぇ、まぁ」


祖母と明日馬さんも似たようなやりとりをした。


「待て、あそこは」


祖父は、その建物に釘付けになった。


…多分、探偵の調査書の中に、写真があったのだろう。


『失礼しま〜す!』


建物に入っていくリポーター。


カメラが、店内にいる四人を映し出した。


四人は、いつものように…

いつも以上に、笑顔で言った。


『ようこそ!『シューズクラブ』へ!』


ーと。


「消さないで下さいね、普段顔を出さない息子達が、一度に見れる貴重な機会なので」


「優馬は、小説の舞台に自分で行かないと気が済まないから、旅行ばかりしていて…

なかなか会えないんです」

二人の言葉に祖父母は何も言えなかった。

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