《MUMEI》

俊彦が、リポーターの足に触れている姿が映し出された。


『左足の方が、少し小さいんですね。

それに、全体的に幅が狭い』


『わかるんですか?』


『兄貴の特技なんです』


集中している俊彦にかわって、雅彦が説明した。


それから、作業スペースで微調整を行う俊彦が映し出された。


「職人って感じだな」


光二おじさんが感心したように呟いた。


『いかがですか?』


『すごいです! 履きやすいし! これで、この値段はお安いですよね!』


『ありがとうございます』

『と、ところで、皆さん。彼女、とかは…』


期待に胸を膨らませた女性は、…


次の瞬間、ガックリと肩を落とした。


(あれ…孝太も?)


私は孝太を見つめたが、画面の中の孝太はいつも通りのポーカーフェイスでよくわからなかった。


『勘違いしちゃうお客様、いませんか?』


リポーターの質問に、俊彦は笑いながら


『ここは、ホストクラブじゃないし、俺達はホストじゃないんで』


と答えた。


それは、それからの俊彦の言葉は、祖父母へのメッセージのように聞こえた。


『俺と和馬、好きな子に好かれたくて、ホストやってたんです』

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