《MUMEI》

『つまり、お客にぴったりな、ガラスの靴のような素晴らしい靴を選んで、いつか王子様に巡りあえる手助けをする

幸せを願うのが、この店なんだろ?』


『そうなんです!』


俊彦が、優馬さんの手を掴んだ。


『さすが先生!』


リポーターが歓声をあげ、スタッフから拍手が起こった。


そして、『さすが我が息子!』と、明日馬さんと真理子さんも拍手していた。


『あぁ、そうだ。忘れてた』


『はい?』


首を傾げるリポーターの目の前に、『花月堂』の和菓子と…


何故か、コーヒーが置かれた。


『斬新な組み合わせ…ですが…これは、あっ、ちょっと』


顔を引きつらせるリポーターの持っていたマイクを俊彦が奪った。


『蝶子? 見てる?』


「へ?」


聞こえるはずもないのに、私は思わず返事をした。


『お客様が、蝶子のケーキ食べたいって言ってるから、早く帰って来て!
皆も待ってる!
俺も待ってる!』


『こ、困ります』


慌ててリポーターがマイクを取り戻した。


そして、優馬さんと二人で町を散策し、中継は終了した。


インタビューを受けた人々の口からは、二言目には、私の名前が出ていた。

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