《MUMEI》

「あの店に、和菓子は無いよな。
バレンタインのケーキは、確かに美味しかったし」


「…確かにうまかった」


「おじいちゃん…」


「儂はまだ認めんぞ!お前達はまだ付き合い始めたばかりだと聞いとるし…

その…」


祖父は悩んだ挙句、『今年の冬にまた来なさい!』と言った。


祖母は、『もう一度、きちんと三枝の話を聞いてからまた考えます』と言った。

「これで…借りは返せたかな?」


「はい、ありがとうございます!」


「じゃ、このまま帰りましょうか、一緒に」


「は…い?」


首を傾げる私に、明日馬さんと真理子さんは


「「面白そうな商店街!」」


と言って、私を引っ張った。


「あ、あの?」


「あ〜、蝶子ちゃんの荷物バックだけです」


光二おじさんが、素早くバックを持ってきて、明日馬さんに渡した。


「「失礼の無いように」」

「え、え? 」


「「じゃあ、どうもお邪魔しました」」


「ええぇぇ?!」


こうして私は


来た時と同じように


全く心の準備も出来ないまま


山田家を後にした。

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