《MUMEI》 撮影親友役は藤倉大輝(ふじくらたいき)さん。 オレより3つ年上の20歳だけど、すごく童顔で、中学生って言われても全然違和感ない。 「谷口くん、よろしくね。よかったら大輝って呼んでよ!仲良くしよう」 そう言って右手を差し出してきた。 オレは何のためらいもなく、その手を握っていた。 「オレのことも有希って呼んでください、大輝さん!」 本当にいい人だ。 *** 『いいなぁ〜長谷川のヤツ。取り残されてるのはオレ達だけだぞ!大輔、お前は好きな女子とかいないのか?』 『オレは……。オレのことはどうでもいいだろ』 『よくないよ。お前モテてるのに彼女いないっておかしいだろ』 『きっと……みんな男を見る目があるんだよ、彼女達はさ』 『それはどう考えたっておかしいだろ!今の時代は顔のいい男だよ。…見ろ、この取り残されっぷり。お前とオレの取り残され方は、意味が違うんだぜ』 『そうだね……。違うよ』 『なに認めてんだっ!嫌味かよ……。…大輔?』 『オレ……オレが彼女作らないのは、女子が…恋愛の対象……じゃない……からなんだ』 『え……』 かすれた声しか 出ない。 黙っちゃダメだ。 笑え! 流せよ! 何やってんだ、 オレ……。 『……ゴメン!今の……忘れてくれ。じ…冗談だよ。本気にすんな、冬馬』 “冬馬” 嘘ついたら、 必ずしゃべると ボロが出る。 …お前、今 “トーマス”って 呼ばなかったよ。 『……ありがとう。大輔』 『ええ!?な、何が』 『話してくれてありがとう。……そう言ったんだ』 『どうして……』 『何年一緒にいると思ってんだ?お前が嘘ついたことくらいわかるよ。……親友だろ』 不覚にも 泣きそうに なった。 前へ |次へ |
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