《MUMEI》

「乙矢の撫で方スキー……乙矢を目指して撫でるようにしてるんんだ。」

二郎は気持ち良さそうに目を閉じている。

「……光栄だな」

そんなに気に入ってくれてるならいくらだって撫でていたい。

「……なー 乙矢さ、沙織ちゃんと何で付き合ったげないの?」

沙織ちゃん……?
ああ、そうか二郎の想い人の女だ。

「好きじゃないから……」

俺は二郎以外興味ない。

「酷いや、あんなに優しい人を好きにならないなんて……」

ふて腐れて二郎は枕に突っ伏す。

「好きな人しか付き合わないよ。」

だって、そうだろ?

「うん……そうだね。」

俺に言わせるなよ。
いつだってお前に尽くしてきたじゃないか。

「二郎、手、繋いで」

繋いだ後はつい、笑ってしまう。

「昔俺を真ん中に挟んで三人で眠ったね。」

七生と二郎を取り合ううちに手を繋いで眠ってしまったときもある。

「二郎の体温が適温でよく眠れたんだ。」

「お陰で寝返りうてなかった。」

そうそう、誰よりも安眠出来なかったんだ。

「………………最近俺、乙矢や七生の告白前後に告白されるんだ、うん……でもやっぱり断るんだけれどね。振った後決まって

『もっと優しい人だと思ってた』
……って、
傷付いたよ。
もう慣れたけど。」

一生の不覚……俺が少し距離を置いている間に二郎がそんな目に遭っているとは。

「じろー……」

可哀相に、お前は悪くないんだからな。

撫でると苦しげな顔立ちになる。

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