《MUMEI》

警察の捜査は、決して手抜きではなかったが、どこか、冷めているような感じだった。


まるで、『カズ』の父親が怖くて、『仕方なく』捜査しているような…


その様子に激怒した父親は、金を払い、東京から有名な探偵を呼び寄せる。


その探偵が、小説の主人公で、シリーズ化もされている


『宗方 優馬』なのだが…

(小説の主人公が、探偵で、本名ってすごいな)


私はそう思いながら、探偵・『優馬』と、彼に協力する靴屋のアルバイトの『コウ』・それに、美容師の『レイ』の三人を中心に展開する小説の中盤を読んだ。

この時点で、もっとも怪しいとされる人物は二人にしぼられていた。


それは、『トシ』と


『カズ』に襲われた事もある、花屋の『ナツ』だった。


(何か、俊彦、犯人っぽい…)


『優馬』が、『カズ』の首を絞めた凶器は靴紐だと気付いた時点で、新幹線が駅に着いてしまった。


読み終える事ができなくて、ガッカリしている私に、真理子さんが『犯人わかった?』と訊いてきた。


私が、迷いながら『トシ』と答えると、真理子さんは笑いながら否定した。


(気になる…)


真理子さんの隣で明日馬さんも笑っていた。

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