《MUMEI》

「蝶子は俺の事そんなに愛して無いんだ

だから、あんな事言ったんだ…

俺は、ずっと不安だったのに…寂しかったのに…

皆に説得されて、仕方なく待つだけで、ずっと、不安で…なのに、蝶子は…

きっと向こうでのほほんとしてたんだ…だから」


「…っ…馬鹿ァ!」


ドンッ!


最初は我慢して聞き流していたが、『向こうでのほほんとしてたんだ』と言う俊彦を…


私は突き飛ばしていた。


「蝶子?」


俊彦は、しりもちをついた。


「わ、私だって、大変だったんだからね!

おじいちゃんもおばあちゃんも『別れなさい』って…ッ…『忘れなさい』って言うし

ッ…様子、見に来た父さん、も、華江、さんだって…追い帰された、し…

こぉ、じ、おじさんは、よくわからないしぃ…

こ、ないだなんかぁ…ウ…見合い、写真、いっぱいィ見せられるしぃ…」


しりもちをついたまま呆然と私を見上げる俊彦に、私は今までの苦労を訴えた。

「たっ…たい、へん」


「大変そうだったよ、実際」

「気を張って…頑張ってたもの」


言葉が出なくなっていく私のかわりに、明日馬さんと真理子さんが説明してくれた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫