《MUMEI》 アドリブヘノ恐怖「ええええっ」 「…何だ?急に大きな声出して」 「す…すみませんっ!大輝さん!集中してるのに」 「いや……まぁ台本じゃなくてゲームにだけど。それよりどうしたの?」 「これ見ましたか?」 「今日の台本?」 「いいえ、来週のですけど」 「来週?気が早いねぇ」 「早くないですよっ!あっという間です」 「で?なんなの?」 「あ……ここです」 オレは指差して、問題の箇所を見せる。 「……アドリブ?これがどうかした?もしかして経験ないの?」 「ありますけど……問題なのは流れなんです」 「流れ?」 大輝さんは首をかしげた。 「とにかく、読んでみてください」 大輝さんはやりかけのゲームをオレに渡すと、来週の分の台本を読み始めた。 セリフだけじゃなくて、構成、シチュエーションまでもがアドリブだった。オレと大輝さんで考えて、監督や美術の人に話すように 指示があった。 ――しばらくして。 「これは大変だな。演技力だけじゃなくて、オレ達の人間性まで問いてる」 「……現代の若者代表って訳ですかね」 「……だな。この仕事、やっぱり一筋縄ではいかないな」 「ハイ。覚悟していたより難しいです…」 オレ達はただ立ち尽くした。 「……あ、これ」 「あぁ。ゲーム…」 ゲームを渡す。 大輝さんはふと画面を見た。 「あ……あああっ!」 「どうかしましたか!?」 「ラスボス倒しちゃったの……?」 「ハイ。簡単で……」 「ヒドイよ〜!オレ楽しみにしてたのに!」 「あっそうだったんですか!?すみません!!」 ……まったくもって、緊張感がない。 でも……なんとなくだけど、大輝さんと一緒なら大丈夫な気がするんだ……。 前へ |次へ |
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