《MUMEI》

パーティーは一次会から二次会に移ろうとしていた。

この日、厨房とホールは咲子さんを中心に、祐介さんと勇さんといういつものメンバーに加え、華江さんと琴子もいた為、私がいなくても余裕だった。


(それは、いいけど…)


私の身には、困った事が起きていた。


そして、私は心配そうに見つめる俊彦に…


真っ赤になりながら『トイレ』と訴えた。


すると、俊彦は『はいはい』と笑顔で言って、私の手を引いてトイレに誘導した。


「ここで待ってるから、早く戻って来てね」


俊彦がトイレの入り口で手を離したので、私は慌てて中に入った。


『クローバー』のトイレは車椅子でも入れる位広く、鏡も洗面台も個室内にあった。


個室内は清潔で、フローラル系の甘い香りに包まれていた。


本当は節水したいところだが、私は、俊彦が本当に外で待っていそうな気がして、機械の流水音では無く、本物の流水音で…


中の様子を知られないようにした。


それから、手を洗い、温風で乾かした。


カチャッ


「お待た…」


ドンッ


(え?)


カチャリッ


「と…ンッ…ン……ん…」







「ハッ……ッ……」

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