《MUMEI》

「…充電、完了」


そう言った俊彦の舌先からは、糸を引くように唾液がこぼれており、その先は、私の舌先に繋がっていた。


俊彦は、トイレから出てきた私を再び個室内に押し戻し


素早く鍵をかけると


とろけそうな長い長いキスを私にしてきたのだった。

「やっぱり蝶子も寂しかったんだね。

…今ので、よく、わかった」


俊彦が言うように


私は、久しぶりに感じる俊彦の唇と舌の感触に、気が付くと夢中でキスに応えてしまっていた。


(は、恥ずかしい…)


「いいよ。そうしたのは、俺だからね。

本当は、最後までしたいけど…ここじゃ、ね?」


俊彦の言葉に、私はますます赤くなった。


「こらこら、そんな可愛い顔すると…したくなっちゃうよ?」


「なっ…」


俊彦が、私を優しく抱き締めた。


その時、ホールから『蝶子と俊彦は?』と言う夏樹さんの声が聞こえた。


(まずい)


慌てる私を俊彦は、『まだ大丈夫』と言って離さない。


明日馬さんが『トイレだよ』と答える声が聞こえ、私は焦り出した。


「見てくる!」


父の足音が聞こえた。


その時、俊彦が私に囁いた。


「蝶…子ちゃん?」

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