《MUMEI》 狂乱ノ宴"前夜"魔王の部屋ではシギと静負が一緒になって笑っていた。 「ハッハッハ!そうだったそうだったなぁ?あんときゃあ死ぬかと思ったよ!まさかあんな人間が居るなんてなぁ思わなかったよ!」 「フフフ、お前ボロボロだったしなぁ。」 「ウッセェ!だいたいテメェが俺を盾に使いやがったんじゃねえか!」 「神といえども命は惜しいのさ。」 「あれの所為で俺は5歳時に負けるとこだった…」 昔の事を思い出したのかシギはブルリと身震いした。 「まあまあ命が在るならいいのさ、他はあっても命は一つってね♪」 「なんか良い事言って流そうとしてネェか?」 「ソンナコトナイデスヨ?ワタクシワルクナイシネ?」 「言葉ガッチガチじゃねぇか!!テメェ本当に神かよ!!」 「それいったら俺もお前も全然"らしく"無いよな?」 「うっ!痛いところを…!」 実際このやりとりを端から見たら何処の漫才コンビ?とは思っても、神や魔王とは絶対に思わないはずだ。 今もシギは静負に言い返そうと必死だ、こんな2人だからこそ、人間界でも怪しまれ無かったのかもしれない。 おおよそ神や魔王"らしくない"。 これがこの2人に対して言えることであり、緑妖死鬼も出会ってから直ぐにそう思っていた。 「ねぇねぇ?兄ちゃん達ぃ…兄ちゃん達も僕から奪いに来たのぉ?」 10年前、死鬼は自分に親がいない事を理解できず、義母や義父が自分の親とも思えず、まだ5歳だった少年はテレビであっていた誘拐事件を見て、 "自分の親は連れて行かれたから取り戻さなくては" という考えを吐き出した。 それは精一杯の抵抗であり希望となって、深く、深く…少年に根をはっていった。 そんな事情を知らない静負とシギは少年の言っている意味はわからない、それよりもビル、少なくとも5階の高さから人が、落ちて着地した事実がいまだに信じられない。 「…なぁ」 「…ん?」 「コイツ…どこから俺を狙ってやがった?」 「ビルか…どっかの窓から…かな?」 「気配…感じたか?」 「全然?」 静負はやれやれといった感じで首を振る。 「この、魔界の住人すら凌ぐような殺気を全く感じさせず、この俺様を狙ったって?」 「僕も…上を見なかったら気付かなかったなぁ…」 目の前の異常に驚きはしているが2人は全く物怖じしない。 それよりもシギはワクワクしていた。血の気が多いのだ。 それに対して静負は逆に冷静、ではなくドキドキしながら、目の前の屈折しまくってそうな少年がどうやったら心の底から笑ってくれるかを考えていた。 こちらもこちらで"闘うことは決定済"だった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |