《MUMEI》 サザエは、擦り鉢をキッチンへと運んだ。 「あの子は、もうすぐ帰ってくるから、アナタは暫くパチンコにでも出掛けてて。」 サザエは、用済みとばかりにマスオを人払いする。 「あぁ――…。」 渋々家を後にしようとするマスオに、サザエは念を押した。 「…いいこと? …打ち合わせ通りにやれば、何の問題もないのよ。」 サザエの眼がギラリと光った。 その目に愛情や優しさといった温かみは、勿論無い。 目的を果たす為なら手段を選ばない、エゴイストの目…。 ――…雄を喰う、雌カマキリのような目だった…。 前へ |次へ |
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