《MUMEI》 「なにそれ見たい。」 光は直ぐさまバァさんに寄って行く。 「年期入ってるね」 思わず口にしてしまう。 「昔の写真だよ」 小さな笑みを浮かべながらバァさんは表紙をめくる。 「アルバムか……」 兄貴はやっと重い腰を持ち上げた。 丁寧に張り込まれた写真は黄ばんで角は丸まっていた。 「これが国雄さんとジィさん、私にはどっちがどっちだか分からないけれど。」 俺にもさっぱりわからない。 「国雄が若くて短髪だ……」 光の言う通りに、頭のすっきりした兄貴が二人並んでいるようにしか見えない。 「他は?」 兄貴は真剣に写真と同じ顔を見つめていた。 「これはそうだね、家族写真だ。」 指された先には兄弟達の間で相似の顔が並んである。 「国雄さんはあたしが嫁いだときにはもういなかったね。 ジィさんは話したがらなかったよ。」 バァさんは遠い目をした。 「――――――縁を切られた?」 兄貴はぽつりと言う。 バァさんは首を振った。 「……分からないね。ただ、ジィさんには言ってないけれど会ったことはあるんだよ。」 バァさんはそのときの記憶を克明に話してくれた。 前へ |次へ |
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